ー足場の壁つなぎとは?必要性や設置方法などを解説ー
建築現場で安全のために設置される足場ですが、足場自体にも事故の原因になり得る危険が潜んでいます。足場の上で安全に作業するためには、「壁つなぎ」と言われる足場と建物の壁を固定する対策が必要です。
この記事では、足場における壁つなぎについて、基本情報や必要性、注意点などを解説します。
足場の壁つなぎとは
壁つなぎとは、足場を安定させるために建物の壁などに固定すること、あるいはそのために用いられる部材(壁つなぎ専用金物)の総称です。壁つなぎによって、足場の倒壊や変形を防止できます。
一般的な壁つなぎは、専用金具によって行われますが、建物の構造や周囲の環境によっては単管パイプなどのほかの部材を用いて壁つなぎをするケースもあります。
壁つなぎの種類
足場の壁つなぎには、主に3種類の設置方法があります。
・壁つなぎ専用金物による固定
・キャッチクランプによる固定
・単管パイプによる固定
壁つなぎ専用金物による固定
壁つなぎは、建物の壁に穴を開け、専用の金具で固定する方法が一般的です。
壁つなぎ専用金具は、一方がパイプなどを挟むクランプ、もう一方がネジ型になっています。ネジ側を壁に垂直に差し込み、クランプを足場のパイプなどに取り付けることで固定できます。クランプを垂直に建っている支柱に固定する場合は、ラチェットスパナなどの工具が必要です。
壁つなぎ専用金物は、足場と建物の距離に合わせて長さを変えられる構造になっており、さまざまな規模の現場で用いられています。
キャッチクランプによる固定
キャッチクランプによる固定とは、壁つなぎ専用金具を用いず、単管パイプとクランプを使用する方法です。鉄骨がむき出しになっている建物などに用いられます。
しかし、専用金具による壁つなぎに比べると耐久性は低くなりやすく、より慎重な設置作業・安全管理が必要です。足場を移し替える「盛替え」の際にも、あらためて強度を確認することが大切です。
単管パイプによる固定
解体工事などの際には、F型にした単管パイプで駆体を挟むという固定方法が用いられるケースもあります。キャッチクランプ同様に、専用金具による固定に比べると強度が低いため、別途対策が必要になります。
足場のアンカーとは
足場で用いられるアンカーとは、足場や部材を固定するためにコンクリートに埋め込む「アンカーボルト」のことです。鉄やナイロンなどさまざまな素材の製品があり、形状や重さ、強度などもメーカーによって異なります。現場の状況に合わせた部品を選び、適切に取り付けることが大切です。
アンカーの取り付け方法は、「埋込式」と「打込式」に分けられます。
埋込式
埋込式とは、コンクリートの打設時にアンカーを埋める方法で、古くから広く用いられています。一方で、施工には高い技術力が必要なため、対応できる業者は多くありません。
打込式
打込式(施工アンカー)はすでに固まっているコンクリートに対して、ハンマーなどでアンカーを打つ方法です。ドリルで穴を開け設置するケースもあります。
埋込式に比べて容易に施工できるものの、コンクリートの強度などを確認してから行う必要があります。
足場の壁つなぎの設置基準
壁つなぎの設置には、労働安全衛生法の基準が適用されます。
安全衛生規定の第570条には「一側足場、本足場又は張出し足場であるものにあっては、次に定めるところにより、壁つなぎまたは控えを設けること」という記載があり、施工者はルールに沿った方法で設置や安全管理を行う義務があります。
壁つなぎの間隔に関する基準
労働安全衛生法では、単管足場やくさび式足場における壁つなぎの設置間隔を垂直方向では5.0m以内、水平方向では5.5m以内と規定しています。
枠組み足場に関しては、垂直方向で9m以内、水平方向で8m以内の間隔を基準としています。
枠幅が600mm未満の簡易枠組み足場は、垂直方向も水平方向も5.5m以内が基準です。
強い風を受ける場合
強風を受ける(風荷重が大きい)場合は、足場の安定性が損なわれやすく、倒壊のリスクが高まります。そのため強風や台風が予測される場合は、設置・作業できる足場の高さが制限されます。
建物の構造による制限
壁つなぎは、建物の構造によっても制限されます。たとえば足場と建物の位置関係によっては、金具の長さが足りなかったり、適切な位置に取り付けられなかったりするケースがあります。
壁つなぎができない場合は、足場の設置位置や種類を変えるなど、足場工事の法規制に遵守できる方法への調整が必要です。
新築工事における壁つなぎの注意点
住宅の新築工事では、先行足場が一般的です。先行足場とは、建物より先に足場を組み立てることであり、通常の壁つなぎのように建物の壁に固定できません。また住宅の新築工事では、壁に穴を空けたがらない方が多く、従来の方法を用いれないケースも多いです。
そのため新築工事における足場は、より高い自立安定性が求められます。具体的には、全周を緊結した構造にしたり、各面に控えを設けたりする必要があります。
足場の控えの必要性
足場の控え(やらず)とは、足場を強風や振動から守るために、支柱の外側を補強することです。通常の壁つなぎのように建物に固定したり、壁に穴を空けたりできない場合に用いられます。
控えは、支柱と足場板が交わる部分に取り付けるのが理想です。控えの位置が低すぎると上部に安定感をもたらせず、位置が高すぎると土台となる下部が不安定になります。
控えを地面に固定する際は、適切な角度を維持できるように、杭などで補強します。また控えや補強材が重みで地面に沈まないように、下端部にジャッキベースを挟むことが大切です。
控えは足場の外周を補強するものですが、しっかりと固定できれば、建物側へ倒れるリスクも低減できます。
足場の安全基準についての法規制
足場を安全に使用するために、労働安全衛生規則にて足場の設置と使用に関する厳格な基準が定められています。
たとえば労働安全衛生規則第563条(作業床の安全)、564条(足場組立等の安全作業)、565条(足場組立作業主任者の指名)、第566条(足場組立作業主任者の責任)、567条(安全点検)などに足場関連の安全規定が記載されています。
足場の組立にあたっては、常に最新の法規を遵守し、安全な作業環境を確保しましょう。
まとめ
足場における壁つなぎやアンカーの概要、設置方法、安全管理などについて解説しました。足場は高所での作業を安全に行うために設置するものであり、足場が事故の原因になっては本末転倒です。
必ず諸規定を遵守して、安全第一で設置しましょう。建物の構造などによって一般的な設置方法を選択できない場合は、法規制に則って代替案を講じる必要があります。
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